• 更新日:2025.03.05
  • 作成日:2025.03.05

電力メーターに有効期限?ビル所有者が知るべきポイント

ビルや建物の電力使用量を計測する電力メーター。法令により有効期限があることはご存じでしょうか。所有している建物に親メーターと子メーターが設置されている場合、特に注意が必要です。

では、どのような点に注意すべきなのでしょうか。この記事では、電力メーターの有効期限や、その確認方法などについて、ご紹介をしていきます。

電力メーターとは

電力メーターとは、建物内で使用される電力量を計測する機器です。電力量計とも呼ばれます。各家庭にも設置されていることから、私たちにとっても身近なもので、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。電力メーターは一般家庭だけでなく、ビルや建物など、電力を使用する場所に設置されています。

電力メーターといっても、従来の機械式(図1左)のものもあれば、数値がデジタル表示され遠隔通信で使用量の把握ができるスマートメーター(図1右)と呼ばれるものもあります。*1

図1 様々な電力メーターの種類

出所)資源エネルギー庁「電力会社の切り替え方法」

https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/electricity_liberalization/step/

親メーターと子メーター

そんな電力メーターですが、建物によっては「親メーター」と「子メーター」が設置されている場合があります。

一般家庭の場合は、電力メーターは1つ設置されているのが一般的です。一方で、テナントビルやアパートなど、複数の利用者がいる建物の場合は、親メーターと子メーターが設置されています。これは、テナントや入居者に対し、使用量に応じた電力料金を配分し請求するためです。なお、子メーターは「証明用電気計器」とも呼ばれています。*2

親メーターと子メーターが設置されている建物の場合、親メーターの管理は電力会社が行いますが、子メーターについてはビル所有者や管理者が管理責任を負います。*2

図2 親メーターと子メーターの関係性

出所)経済産業省 中部経済産業局「電力の計量について|証明用電気計器(子メーター)について」

https://www.chubu.meti.go.jp/d41denji/meter/index.html

電力メーターに関する法令

電力メーターの使用にあたっては、関連する法令を把握しておくことが重要です。特に、子メーターに関しては、ビル所有者や管理者が管理責任を負うことから注意が必要です。関連する法令をご紹介していきます。

法令で規定されている特定計量器

電力メーターのように各種取引や証明に使用される計量器は、「特定計量器」と呼ばれ、計量法により規定されています。特定計量器には、電力メーターに加えて、ガスメーターや水道メーターなど18種類が指定されています。*3

計量法による規定

計量法第16条(使用の制限)において、次の事項に該当する特定計量器は使用してはならないと定められています。*4

  • 検定証印又は基準適合証印が付されていないもの。
  • 検定証印又は基準適合証印の有効期限を経過したもの。
  • 変成器*とともに使用する電気計器の場合、付属変成器と同じ合番号が付されていないもの。

*変成器:電圧や電流を調整する装置のこと。トランスとも呼ばれる。

そのため、電力メーターは、検定又は基準適合検査に合格し、有効期限内のものでなければ使用できません。これは、様々な環境で使用されるメーターに関して、正確な計量を担保するために法令により定められています。

計量法に違反した場合の罰則

計量法に違反して電力メーターを使用した場合は、罰則が課されることになります。
計量法第172条において、「6ヶ月以下の懲役若しくは50万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」とあります。法令違反を未然に防ぐためにも、計量法の遵守が重要になります。*4

電力メーターの有効期限

ここからは、電力メーターの有効期限についてみていきましょう。電力メーターをはじめ、特定計量器の中には法令により有効期限が定められているものがあります(図3)。

図3 有効期限のある主な特定計量器

出所)経済産業省「計量器の有効期間にご注意ください」

https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun/techno_infra/11_gaiyou_tani6.html

図3では、電力メーター(電力量計)の有効期限が5~10年とされています。
この期限は電力メーターの種類などにより異なります。「メーター単独か変成器を組合せているか」「定格電流」「電子式か機械式か」によって細分化されています(図4)。これらの組合せにより、有効期限が定められています。

(注1)単独計器と、計器用変成器と組み合わせず単独で使用する計器のことをいいます。
(注2)変成器付計器とは、変流器又は計器用変圧器・変流器と組み合わせて使用する計器のことです。計器用変圧器は高電圧を低電圧(110V等)に、変流器は大電流を小電流(5A)に変換するものです。
(注3)定格電圧が300V以下の電力量計で定格一次電流が120A以下の変流器とともに使用されるもの(定格一次電圧が300Vを超える変成器とともに使用されるものを除く。)は、検定証印等の有効期間が7年になります。なお、平成14年7月3日施行の計量法施行令改正前の変成器付計器((注3)に該当するものを除く。)の検定証印等の有効期間については、電子式、機械式とも5年になります。

図4

出所)日本電気計器検定所「電気計器等の検定・検査|有効期限」

https://www.jemic.go.jp/kentei/dk_kentei.html https://www.jemic.go.jp/wp-content/themes/jemic/kentei/a_3_1.pdf

電力メーターの有効期限の確認方法

電力メーターの有効期限はどのように確認すればよいのでしょうか。
有効期限は、電力メーターに貼られているラベルで確認することができます(図5)。メーター単独か、変成器付きのメーターかで表示が異なりますので、注意が必要です。*5

  • 検定ラベル又は適合ラベル(メーター単独の場合)
    計器のガラスカバー正面に貼付されている直径2cmの白地のラベルに黒の算用数字で有効期限が表示されています。
  • 検定票の場合(メーターに変成器が付いている場合)
    計器の正面に向って、右側の封印ネジに取り付けられているファイバー製の検定票に、有効期限が算用数字で刻印されています。

(注1)単独計器とは、計器用変成器と組み合わせず単独で使用する計器のことをいいます。
(注2)変成器付計器とは、変流器又は計器用変圧器・変流器と組み合わせて使用する計器のことです。計器用変圧器は高電圧を低電圧(110V等)に、変流器は大電流を小電流(5A)に変換するものです。
(注3)定格電圧が300V以下の電力量計で定格一次電流が120A以下の変流器とともに使用されるもの(定格一次電圧が300Vを超える変成器とともに使用されるものを除く。)は、検定証印等の有効期間が7年になります。なお、平成14年7月3日施行の計量法施行令改正前の変成器付計器((注3)に該当するものを除く。)の検定証印等の有効期間については、電子式、機械式とも5年になります。

図5 電力メーターの有効期限

出所)経済産業省 四国経済産業局「子メーター(証明用電気計器)の有効期限が過ぎていませんか?」

https://www.shikoku.meti.go.jp/03_sesakudocs/0501_denkigas/kometer/kometer.html

電力メーターの交換方法

では、有効期限が近付いた電力メーターの交換はどのようにすればよいのでしょうか。
今まで使用していた電力メーターを修理(オーバーホール)し検定を受ける*という方法と、既に検定に合格している新たな電気メーターに交換する2つの方法があります。電気工事会社などへ相談を行いながら、メーターの修理(オーバーホール)や交換を行います(図6)。*6

*再検定して使用する場合、電気メーターのオーバーホールおよび検定を実施している期間は、代替の電機メーターの手配や交換工事が必要になります。

図6 電力メーターの交換について

出所)経済産業省 四国経済産業局「有効期限を確認してください|証明用電気計器(子メーター)の有効期限が過ぎていませんか?」

https://www.shikoku.meti.go.jp/03_sesakudocs/0501_denkigas/kometer/leaflet.pdf

電力メーターの特別検定とは

変成器付の電力メーターの場合は、通常の検定とは別に、特別検定と呼ばれるものがあります。
特別検定とは、初回検定年月から14年を経過していない変成器付電力メーターの場合、電力メーターのみ検定を受けることができる制度です。通常の検定では、電力メーターと変成器が同時に検定を受けますが、特別検定は変成器の調達や交換工事が不要になるメリットがあります(図7)。*7

図7 特別検定とは

出所)三菱電機「証明用電力量計の検満更新」

https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/pmng/pmd/ex/renew/renewal/index.html

まとめ

電力メーターといっても親メーターか子メーターかで、その管理責任の所在が変わります。子メーターが設置されているビルや建物の所有者は、メーターの有効期限が切れていないか注意・管理を漏れなく行い、法令違反を発生させないよう十分に注意しましょう。

MAIL MAGAZINE

ビルに関わるすべての方に!ちょっと役に立つ情報を配信中

メール登録

*1
資源エネルギー庁「電力会社の切り替え方法」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/electricity_liberalization/step/

*2
経済産業省 中部経済産業局「電力の計量について|証明用電気計器(子メーター)について」
https://www.chubu.meti.go.jp/d41denji/meter/index.html

*3
日本電気計器検定所「電力メーターの有効期限」
https://www.jemic.go.jp/wp-content/themes/jemic/kihon/kk22.pdf

*4
経済産業省 近畿経済産業局「電気の子メーター(証明用電気計器)の有効期限について」
https://www.kansai.meti.go.jp/3-9kaihatsu/keiryou/171120keiryou.html

*5
経済産業省 四国経済産業局「子メーター(証明用電気計器)の有効期限が過ぎていませんか?」
https://www.shikoku.meti.go.jp/03_sesakudocs/0501_denkigas/kometer/kometer.html

*6
経済産業省 四国経済産業局「有効期限を確認してください|証明用電気計器(子メーター)の有効期限が過ぎていませんか?」
https://www.shikoku.meti.go.jp/03_sesakudocs/0501_denkigas/kometer/leaflet.pdf

*7
三菱電機「証明用電力量計の検満更新」
https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/pmng/pmd/ex/renew/renewal/index.html

RANKING

ランキング