ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス:企業統治)を考慮した投資活動や経営・事業活動のことです。*1
ESGに配慮した企業に対しての投資である「ESG投資」の2018年の世界投資額は3,100兆円で世界の投資額の3分の1を占めました。*2
オフィスビルなどの不動産に関してもビル自体の環境負荷の低減だけでなく、オフィス環境の改善や生産性の向上、優秀な人材確保等の点から、健康性、快適性等に優れたビルであるという認証制度の構築が重要であるとされています。*3
本記事では、オフィスビルにおけるESG評価を高めるためのポイントについて詳しく解説します。
ESG(環境・社会・ガバナンス)とは
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って作られた言葉です。世界的に注目されている中、企業評価をする際にも参考にされています。
ここでは、ESGへの取り組みが企業評価に与える影響や、これからの不動産に求められている要素について解説していきます。
持続可能な世界の実現のために企業が実践する経営・事業活動
近年では世界的に気候変動問題が注目されており、持続可能な世界を実現するために企業がESGに配慮した取り組みを行うことが求められています。
ESG経営が注目される背景のひとつとしては、SDGsに対する意識の向上が挙げられます。
SDGsは2015年に国連が採択した先進国を含む国際社会全体の2030年に向けた環境・経済・社会についてのゴールです。*4
SDGsは政府だけでなく、⺠間企業においても取り組む動きが高まっているため、ESGに関係なく自社の利益のみ追及する企業は、投資家などから企業価値を低く見られる傾向があります。
したがって、ESGに配慮した企業活動を実践することは、長期的な成長が見込める経営基盤がしっかりした企業とみなされています。*2

図1:出所)年金積立金管理運用独立行政法人「ESG投資」
https://www.gpif.go.jp/esg-stw/esginvestments/これからの時代はESGに配慮した不動産が求められている
不動産は、日常生活や仕事をする上で欠かせない基盤です。
ESGが世界的に広まりつつある中、ビルにおいても環境に負担をかけない建物というだけでなく、働く人の健康性や快適性等に優れたオフィス環境の構築を目指すようになりました。
健康性・快適性等の要素を「見える化」できる新しい認証制度を国土交通省が示しており、今後の不動産市場はESGに配慮した優良な不動産の供給を促進する動きがみられます。*3
ESG投資の普及促進に向けたオフィスビルの認証制度
国土交通省はESG投資の普及促進に向けて、働く人の健康性と快適性等に関するオフィスビルの認証制度を発表しました。
ここでは、ESG投資の普及促進に向けたオフィスビルの認証制度について解説します。
「健康性・快適性」「利便性」「安全性」に関する内容を評価
下図2は、働く人の健康性・快適性等に関するオフィスビルの認証制度をまとめたものです。基本性能・運営管理・プログラムの3つに分けて、「健康性・快適性」「利便性」「安全性」に関する内容を評価することを想定しています。
例えば、基本性能においては「健康性・快適性」を高めるために空間や内装、音、光、空気・空調などのハード面に配慮することが必要です。効率よく業務を行うために移動空間やコミュニケーション、情報通信など利便性の高いオフィス環境を用意します。働く人の安全を守るため、災害対応やセキュリティなどの対策も欠かせません。
インテリアも快適に業務を進められるような内装やレイアウトにして、ストレスのない環境を提供します。

図2:出所)国土交通省「ESG不動産投資の基盤整備」p.2
https://www.mlit.go.jp/common/001228138.pdf認証制度で評価されるポイント
不動産分野でのESG投資の普及促進に向けた認証制度で評価されるポイントは、下図3の通りです。例えば、「健康性・快適性」の評価要素である「光」では、照度を目に負担のない程度に設定し、自然光を適度に取り入れ、タスクアンビエント照明を設置するなどの配慮を行うと評価が高まります。
オフィス環境の維持管理や働く人の満足度を確認するための措置も取っているなど、運営管理も適切に行われていることがポイントです。メンタルヘルス対策や運動促進プログラムなど、働く人が心身ともに健康な状態で執務できる環境をソフト面でも用意すると良い評価が期待できます。

図3:出所)国土交通省「ESG不動産投資の基盤整備」p.3
https://www.mlit.go.jp/common/001228138.pdfオフィスを借りる際に入居者が重視するポイント
仕事の生産性を高めるには快適なオフィス空間が必要です。
ここでは、オフィスを借りる際に入居者が重視するポイントについて解説します。
オフィススペースで特に重要なのは「空調」
オフィスを借りる際に入居者が最も重視するのは「空調」で、76%を占めました。(下図4)
快適な温度や湿度、清浄な空気が保たれているかどうかがキーポイントになります。
換気の悪い場所ではエアロゾルによる感染が広がりやすいため、効果的な換気も必要です。*5
次は、「セキュリティ性能が高いこと」で72%の割合でした。オフィスにおけるセキュリティは防犯面だけでなく情報セキュリティも含まれています。安心して執務するために不審者や情報漏洩を防ぐ対策を構築することが重要です。以下は、スムーズに作業できる情報通信環境、快適な明るさなどが続きます。

図4:出所)ザイマックス不動産総合研究所「ESGからみるオフィスビル設備①」
https://soken.xymax.co.jp/2022/10/20/2210-esg_friendly_office_buildings_1/ビル利用者の満足度が向上するスペースは「リフレッシュルーム」
下図5はビル全体で従業員の満足度が向上する設備やスペースをまとめたグラフです。
ビル利用者の満足度が向上するスペースは「リフレッシュ・コミュニケーションルーム」が55%でトップとなりました。
リフレッシュルームでリラックスしながら休憩すると、心身の疲れが癒せるので従業員の生産性が向上するのがメリットです。リフレッシュルームはコミュニケーションルームやミーティングルームとしても活用できるので、社員同士の交流を深めたり、ちょっとした打ち合わせなどにも利用できたりします。
続いて、「屋上テラスやバルコニー(50%)」「個室ワークスペース(49%)」などが挙げられています。

図5:出所)ザイマックス不動産総合研究所「ESGからみるオフィスビル設備①」
https://soken.xymax.co.jp/2022/10/20/2210-esg_friendly_office_buildings_1/ESG評価が上がる具体的な取り組み例
ここではESG評価が上がる具体的な取り組み例について、基本性能・運営管理・プログラムの3点に分けながら解説します。
基本性能【健康性・快適性】
ESG評価のポイントとして最初に挙げられるのが「健康性・快適性」です。下図6は従業員がリラックスしながら働けるオフィスの参考例です。働く人が心身ともに健康な状態で執務できる快適な空間を実現しました。
オフィススペースは明るく開放的で、自然を取り入れたナチュラルな雰囲気を大切にしています。適切な空調で清浄な空気を保ち、大勢の人が集まっても健康に問題が起きないように配慮しています。
明るく清潔なトイレや落ち着いた雰囲気のカフェテリア、緑に囲まれながら過ごせる屋外スペースなどリラックスして過ごせる環境も高評価を得るポイントです。

図6:出所)国土交通省「ESG不動産投資の基盤整備」p.4
https://www.mlit.go.jp/common/001228138.pdf運営管理
快適・安全な環境を維持することも重要な要素です。
自然災害などの緊急事態が発生しても損害を最小限にとどめつつ、事業の継続や早期復旧を可能とするためにBCPの策定と訓練も実施します。
オフィス内の環境調査と働いている人に対する満足度調査を定期的に行い、快適な環境が保たれているかどうかを確認することも必要です。電子掲示板に情報を表示することにより最新情報を、ビルの利用者が共有できます。

図7:出所)国土交通省「ESG不動産投資の基盤整備」p.6
https://www.mlit.go.jp/common/001228138.pdfプログラム
働く人の健康性・快適性等を考慮したプログラムを実施することも評価のポイントです。
例えば、下図8のようにビルの利用者がお祭りなど地域イベントに参加したり、餅つきなど建物内のイベントをビル側が開催したりすることにより、会社を問わずそこで働く人同士の交流を深めることができます。
その他、運動促進に関するプログラムの提供やメンタルヘルスセミナーの実施など、ビルの利用者が健康管理に気をつけながら働ける環境を構築しています。

図8:出所)国土交通省「ESG不動産投資の基盤整備」p.6
https://www.mlit.go.jp/common/001228138.pdfまとめ
近年のオフィスビルに求められている要素は、環境に優しいだけでなく、ビルの利用者が心身ともに快適に働ける環境です。そのため、健康性・快適性等に優れたビルであることがESG評価を高め、資産価値の向上も期待できるようになるでしょう。
国土交通省では、ESG投資の動きは今後も加速していくと考えています。
そのため不動産における健康性、快適性等の性能について鑑定評価に反映する方法が検討されるなど、軽視できない領域になりつつあります。*3
ぜひ、ビル経営や維持メンテナンスの参考にお役立てください。
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*1
内閣府「2.2 ESGの概要」
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/tyosa/r02kokusai/h2_02_01.html
*2
野村総合研究所「ESG(環境・社会・ガバナンス)」
https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/lst/alphabet/esg
*3
国土交通省「ESG不動産投資の基盤整備」p.1
https://www.mlit.go.jp/common/001228138.pdf
*4
環境省「すべての企業が持続的に発展するために」p.3
https://www.env.go.jp/content/900498955.pdf
*5
内閣官房「感染拡大防止のための効果的な換気について」p.2
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/taisakusuisin/bunkakai/dai17/kanki_teigen.pdf


