• 更新日:2026.01.13
  • 作成日:2026.01.13

ビルの安全性と資産価値を守ろう 建築物の定期点検にはどんな法律やルールがある?

建物は、雨や風、災害から利用者を守るものであり、人々の生活や安全には無くてはならないものです。
しかし、人と同じく建物も、経年劣化や老朽化による機能の低下や不具合が発生するようになります。
例えば、建材の劣化により外壁や屋根材の剥がれが発生した場合、中高層建物では大事故に繋がりかねません。
建物の健康は、利用者の安全に直結するため、建物の健康診断=建物の定期点検が必要です。
建築物の定期点検は建築基準法で定められており、建物所有者・管理者の義務となりますが、人と同じように定期的な診断と早めの処置を重ねることが、建物の寿命を伸ばすことにも繋がります。

では、建築物の定期点検は、いつ、どのように行えばよいのでしょうか。
この記事では、建築基準法で定められた定期点検と報告について紹介します。

建築物の定期点検とは

デパート、ホテル、病院など、人が多く利用する施設やビルでは、建物の老朽化や設備の不具合が発生した場合の影響が重大です。
そのため建築物の所有者・管理者は、建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければなりません。
建物の定期点検は、建築基準法第八条と第十二条に定められています。
定期点検が必要となる建物の用途や規模、点検項目、点検周期や点検資格者などが定められており、これに従って実施しなくてはなりません。

維持保全(建築基準法第八条)

建築基準法第八条では、建築物の敷地、構造及び建築設備を維持保全することを義務付けています。*1
例えばビルの広告看板や、建物の外壁など、建物そのものや金具の劣化等による崩落などを防ぐための点検です。
建築物の所有者・管理者自身が、建物に明らかな異常が無いかを日常的に確認することも、この点検に含まれます。
また、ボルトのゆるみなど見た目では分かりにくい不具合や、構造内部の損傷や腐食などは専門家(建築士等)に点検を依頼し維持・管理に努めなくてはなりません。

点検する項目

新潟県土木部都市局建築住宅課では、建築物の点検のポイントを以下のように紹介しています。*2

  • 外壁・屋根・軒裏
    ひび割れ、剥がれ、ふくれ、劣化、漏水等の兆候
  • 階段・屋外階段
    階段の滑り止めに剥がれ、破損、屋外階段やその手すりの著しい腐食、ぐらつき
  • 屋外看板・屋外設備
    看板・アンテナ・室外機などがしっかりと固定されているか、本体や接続金物が劣化していないか(さび、破損、ボルト緩み等)

特に高所に設置された看板等は、高所作業の専門家でないと詳細な点検を行うことができません。
日常的に看板等の様子(異音や風によるぐらつきがないか等)を確認し、異常を感じた場合は専門業者に点検を依頼しましょう。

報告、検査等(建築基準法第十二条)

建築基準法第十二条では、建築物等(敷地含む)、昇降機、建築設備、防火設備について、損傷・腐食その他の劣化状況などの点検を義務付けています。*1
「建築物の12条点検」とも呼ばれ、建築物の点検の基本となるものです。
12条点検は、対象となる建物の用途や規模が細かく定められており、点検は有資格者が行うことが義務付けられています。
点検やその報告が行われていない場合、建築基準法違反となり罰則を受ける規定があるため、確実に定期点検報告を行いましょう。

12条点検の対象建物

12条点検を行わなくてはならない建築物は、建築基準法第十二条第一項で以下のように定められています。*1

  • 建築基準法第六条第一項第一号に掲げる建築物で安全上、防火上又は衛生上特に重要であるものとして政令で定めるもの(劇場、病院、学校、百貨店、倉庫など)
  • 特定行政庁が指定するもの

12条点検は、建物や設備の老朽化や作動不良などにより大きな事故や災害に繋がる可能性のある、不特定多数の利用者がある特定建築物(劇場、病院、学校、百貨店、倉庫など)が対象となります。
また、特定行政庁が指定する建物は自治体ごとに異なるため、対象建物に該当するかどうかは建物所在地の自治体に確認しましょう。

例えば東京都では、

  • 事務所その他これに類するもの
    5階建て以上で、延べ面積が 2,000㎡を超える建築物のうちF≧3階かつA> 1,000㎡
  • 百貨店、マーケット
    F≧3階かつA> 3,000㎡
    (※A=その用途に供する部分の床面積の合計)

というように、12条点検の定期報告が必要な特定建築物・防火設備・建築設備・昇降機等を定めています。*3
12条点検の対象建物は自治体によって異なりますが、5階以上の事務所や、3階以上の特定建築物は、対象となる可能性が高いと思っておくと良いでしょう。

12条点検の項目と周期

12条点検は、建築基準法では「定期に」と定められていますが、以下の期間内に点検を行うという、おおまかな期間の指定しかありません。

(表)法定点検等の実施(P3/8) 国土交通省近畿地方整備局を元に筆者作成

具体的な点検報告の期間は特定行政庁ごとに定められており、例えば東京都では、建築物の敷地及び構造の点検報告時期が以下のように定められています。*3

  • 劇場、ホテル、百貨店、地下街等の建築物の敷地及び構造の点検報告時期
    11月1日から翌年の1月31日まで(毎年報告)
  • 病院、学校、共同住宅、事務所
    5月1日から10月31日まで(3年ごとの報告)

そのため自治体では、対象建物であるかどうかと同時に点検時期も確認しましょう。

点検者と報告

12条点検の点検者は建築基準法で「一級建築士若しくは二級建築士又は建築物調査員資格者証の交付を受けている者」と定められています。
有資格者と、検査可能な対象物は以下の表の通りです。

(表)定期調査・検査報告制度 6.調査・検査の資格者 東京都都市整備局を元に筆者作成

上記の資格者が定期点検を行い、報告書を作成します。
点検報告は、検査者から受け取った報告書を建物の所有者・管理者が特定行政庁へ届け出しなくてはなりません。*4

定期点検の結果をもとに建物や設備のリニューアル計画を

定期点検を行う場合、建築基準法に基づく法定点検だけでなく、ビル診断や劣化の状態を計測してくれるサービスを提供しているメンテナンス会社もあります。
ビルの建物自体は約50年の寿命がありますが、築10年〜15年を経過すると屋根や外壁、機械設備や配管等の劣化が発生してしまうものです。
そのため、ビルではだいたい10〜20年の期間で、小規模・大規模リニューアルを行います。
リニューアルすることで、設備やシステムの最新化・高性能化を図り、ビルの資産価値を高めていくことにも繋がります。
ビルの定期点検や詳細な劣化具合などの診断を行うことで、適切なリニューアル時期や、その内容を計画するデータとしても活用することが可能です。
ただ点検を行うだけでなく、ビル運営に活かせる診断を行ってくれる点検サービスを選ぶことも、ビルの安全性や資産価値を高めていく役に立つでしょう。

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新潟県土木部都市局建築住宅課
https://www.pref.niigata.lg.jp/site/jutaku/gaiheki.html

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東京都都市整備局
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku/chousa-houkoku/ch_2_01.pdf

*4
定期調査・検査報告制度 4.報告の流れ
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku/chousa-houkoku/ch_04.html

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