• 更新日:2026.06.12
  • 作成日:2026.06.12

世界でもっともサステナブルなスマートビル“The Edge”が支える「新しい働き方」

アムステルダムのオフィスビル“The Edge”は、2014年の竣工から現在にいたるまで「世界でもっともスマートでサステナブルなビル」としての評価をゆるぎないものにしています。

その設計理念は “The New World of Work”。デベロッパーであるEDGE Technologiesと、主要テナントであるデロイト社(オランダ)は、単にエネルギー効率を高めるだけでなく、従業員のウェルビーイングや生産性を向上させ、ブランド価値を最大化するという戦略的な目標を掲げています。

本記事ではThe Edgeをさまざまな観点から紹介し、スマートビルが支える価値観を明らかにします。

“The New World of Work”という設計理念

The Edgeは、2015年5月にオランダのアムステルダムで正式開業しました。延べ床面積40,000m²を誇る複合オフィスビルです。*1

このビルの構想を練ったのは、環境配慮型開発に注力するオランダの商業不動産デベロッパー・EDGE Technologies(旧OVG Real Estate)社の専門家グループと、このビルの主要テナントであるデロイト社(オランダ)です。

その設計理念は “The New World of Work”。
オープンで柔軟な環境の中でイノベーションが育まれるというビリーフを基盤に、高性能な職場づくりを目指す考え方です。

デザインにもこうした理念が反映されています。
洗練されたガラス張りの外観をもつThe Edgeでは、北向きの開放的なアトリウムの周辺に各階をつなぐバルコニーが設けられており、入居者は階をまたいで自由に移動し、共有のミーティングスペースに集まることができます。

図1:アトリウムから見たThe Edge

出所)The Edge“The greenest building in the world.”

https://edge.tech/portfolio/the-edge

エネルギー効率と持続可能性を最大化しつつ、利用者の健康、快適性、生産性を最優先する—The Edgeには、利用者にとって快適な職場環境を提供するためのさまざまな要素が備わっています。*2

設計理念である “The New World of Work”がどのように具現化されているのか、まずワークスペースの環境面から、次に「新しい働き方」を支える仕組みという側面からみていきましょう。

世界でもっとも持続可能な建築物

The Edgeは、開業以来、世界中の名だたるメディアに取り上げられ、開業翌年の2016年時点で、世界でもっとも持続可能な建築物のひとつとしての地位を確立しました。*2

ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)

The Edgeは、ヨーロッパの環境指標「Building Research Establishment(BRE)」で98.36%という驚異的な高評価を獲得しました。

推定エネルギー消費量は年間0.3kWh/m²未満で、使用量の102%に相当するエネルギーを自ら生み出す「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」です。*3

これからみていくような構造や仕組みによって、The Edgeは一般的なオフィスビルに比べて電力使用量を約70%削減しています。*2

ソーラーシステム

The Edgeは、太陽エネルギーを効率よく活用するように設計されています。
南側の外観にはソーラーパネルと窓が配置され、屋根にもソーラーパネルが設置されています。

建物の向きやガラス外壁によって、室内の温度を保ちながら自然光をたっぷり取り入れることができます。
さらに、厚いコンクリート構造と奥まった窓の構造によって熱を調整し、日差しを遮るためのブラインドの使用を減らしています。

室内の温度調整

The Edgeの地下130メートルには2つの地下水源があり、温水と冷水の熱エネルギーを貯蔵しています。
このエネルギー貯蔵(ATES:Aquifer Thermal Energy Storage)ポンプは、建物内外の状況に応じて水を循環させ、建物全体の温度を調整します。

このシステムは自家発電された太陽エネルギーで稼働しており、センサー付きのLED照明パネルによって、各フロアの温度や湿度を常に測定しています。

こうした高精度な制御によって、窓際で発生しがちな暑さや寒さのムラが解消されており、建物の空調環境に関しても従業員の満足度が向上しています。

デジタル天井

The Edgeに対するデロイト社(オランダ)の基本方針は「投資回収が10年以内であれば、試す価値がある」でした。*4

そのもっとも高価なイノベーションのひとつがデジタル天井。
ビル内には6,000個の低消費電力LEDが使われており、必要なときだけ点灯します。*2
それはフィリップス社がThe Edge専用に開発した超高効率LEDパネルで、わずかな電力しか必要としないため、インターネットのデータを送るケーブルと同じ配線で電源供給が可能です。*4

さらにこれらのパネルには、人の動きや光・温度・湿度・赤外線などのセンサーが組み込まれており、建物全体をつなぐ「デジタル天井」を形成しています。

こうした革新的なシステムは、快適性を高めるだけでなく、エネルギー消費の大幅な削減にも貢献しています。

“The New World of Work”を支える仕組みと効果

The Edgeは、スマートフォンアプリを中心としたワークスペース管理でも有名です。
それはどのようなものでしょうか。ワークスペースの仕組みと併せてみていきましょう。

「ホットデスキング」

約2,500人のデロイト社(オランダ)社員は1,000席のデスクを共有しています。*4
この仕組みは「ホットデスキング」と呼ばれ、空間を効率的に使いつつ、新たな人間関係や偶発的な交流を促しています。

図2:The Edgeでのワークシーン

出所)Bloomberg“The Smartest Building in the World”

https://www.bloomberg.com/features/2015-the-edge-the-worlds-greenest-building/?utm_source=chatgpt.com

デスクは必要なときだけ使われます。
電話専用の小部屋には、デスクがなく、ラウンジチェアと照明だけが置かれています。

固定デスクがない代わりに、その日の「拠点」となるのはロッカー。
緑のランプが点灯したロッカーを見つけ、社員証をかざせば使用することができますが、同じロッカーを何日も使い続けることは推奨されていません。
それは、固定的な場所や思考から従業員を解き放つことが、“The New World of Work”の哲学の一部だからです。

ゲームルームやコーヒーバーもあり、エスプレッソマシンは社員1人ひとりのコーヒーの好みを覚えています。

至るところに設置された大型スクリーンは、スマートフォンやノートPCと、ワイヤレスで同期することができます。

ちなみに、駐車場も自動化されています。
The Edgeに到着すると、カメラがナンバープレートを撮影し、社員データと照合して自動的にゲートを開きます。

「APPセントリックワーク(アプリ中心主義の働き方)」

The Edgeは、モバイルアプリで完結できる「APPセントリックワーク(アプリ中心主義の働き方)」の先駆的な役割を果たしました。*5

ワークスペースの確保も、同僚の居場所の把握も、ロッカーやドアの解錠も、アプリ1つで行うことができます。
それだけでなく、自分のワークスペースの照明や空調も調整することができ、従業員エクスペリエンスに貢献しています。*1

夕食のレシピを注文すれば、仕事終わりに新鮮な食材が用意されていることも。*4
すべてのデスクにはワイヤレス充電器が内蔵され、スマートフォンは常に充電された状態を保てます。

この仕組みを支えているのが、上述のセンサー群。ビル全体にわたって約2万8,000個が配置され、人の動きや光量、温度、エネルギー使用量などをリアルタイムで収集・分析しています。こうした徹底したデータ活用が「個人最適化」を実現しているのです。*5

社員が使っているのは、デロイト社(オランダ)とデルフト工科大学発スタートアップMapiqが共同開発したアプリ。

図3:The Edgeで使われているスマートフォンアプリ

出所)Worksight “A pioneering smart building that cultivates “experiences””

https://www.worksight.jp/en/issues/538.html?utm_source=chatgpt.com

新しいテクノロジーを開発するたびに新しいアプリをつくっていたら、いくつもアプリをダウンロードしなければなりません。そこで、すべての機能を1つのアプリに集約させました。トレーニングマシンによる運動の履歴なども残ります。

“The New World of Work”の効果

現在の若いワーカーは「どんな環境で、どんな価値観のもとに働くか」を重視します。*5
楽しく過ごせ、生産性や満足度を向上させ、環境意識の高い職場を求めているのです。
では、The Edgeは、どのような効果をもたらしているのでしょうか。

開業以来、従業員から快適性に関する苦情は一件も寄せられていません。*3
デロイト社(オランダ)の従業員の72%が、スマートフォンアプリによって自分の環境をコントロールできていることに満足しています。

欠勤数は45%減少し、生産性は向上。
さらに、デロイト社(オランダ)の人材募集には以前に比べて2.5倍の応募が届くようになりました。*5
The Edgeに移転したデロイト社(オランダ)は、そのブランド価値を高めているのです。

おわりに

The Edgeは、最先端のテクノロジーを駆使していますが、それは「新しい働き方のために、建築は何ができるか」を突き詰めた結果として生まれたオフィスだからです。

エネルギー効率や環境性能、スマートフォンアプリなどのスマート化はあくまで手段であり、目的は従業員のエクスペリエンス向上と企業の持続的成長。

The Edgeが提案する「新しい働き方の世界」は、単なる未来像ではありません。これからのオフィスが進むべき現実的な選択肢として、私たちに多くのヒントを与えてくれます。

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*1
Schneider Electric“Sustainable” p.2, 3
https://download.schneider-electric.com/files?p_enDocType=Customer+success+story&p_File_Name=998-20407298_GMA_US.pdf&p_Doc_Ref=CSS-THE-EDGE-JUNE-15

*2
The Edge“The greenest building in the world.”
https://edge.tech/portfolio/the-edge

*3
Schneider Electric“The world’s most SUSTAINABLE office”
https://www.se.com/ww/en/work/campaign/life-is-on/case-study/the-edge/?utm_source=chatgpt.com

*4
Bloomberg“The Smartest Building in the World”
https://www.bloomberg.com/features/2015-the-edge-the-worlds-greenest-building/?utm_source=chatgpt.com

*5
Worksight “A pioneering smart building that cultivates“experiences””
https://www.worksight.jp/en/issues/538.html?utm_source=chatgpt.com

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