2025年9月、トヨタグループが静岡県裾野市で推進する実証都市「Toyota Woven City(ウーブンシティ)」(以下、「Woven City」)がついにオフィシャルローンチを迎えました。
Woven Cityは、モビリティ、エネルギー、データ活用を軸に、街全体を実験場とする前例のない取り組みです。
目指すのは、「カケザン」による発明。
それはどのようなものでしょうか。
本記事では、Woven Cityを通して、スマートビルやスマートシティに求められる取り組みと役割について考えます。
Woven Cityの住人たち
2025年9月25日にオフィシャルローンチを迎えたWoven Cityは、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)が2020年のCES(Consumer Electronics Show:毎年1月に米国ラスベガスで開催される世界最大級のテクノロジー見本市)で構想を発表し、ウーブン・バイ・トヨタ株式会社(以下、「WbyT」)とともに開発を進めてきたスマートシティです。*1
まず、そこに住む人たちについてみていきましょう。

図1:Toyota Woven City *2
出所)What is Woven City?|ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
https://www.woven-city.global/jpn/ローンチ直後にはトヨタやWbyTなどの関係者とその家族が入居を始め、その後、社外のInventors(発明家)なども入居する予定で、フェーズ1と呼ばれる最初の実証エリアでは、300人の入居を予定しています。*1
また、2026年からはビジターとして一般の人も受け入れる計画です。
Woven Cityでは、トヨタグループや他企業、スタートアップや研究機関などのInventorsがWoven Inventor Garageと呼ばれるさまざまな開発を行い、プロダクトやサービスを生み出し、実証を行います。*3
住民やビジターはWeaversと呼ばれ、Inventorsが開発したプロダクトやサービスのアイデアを試したり、多様な視点からそれぞれのリアルなフィードバックをしたりします。
Weaversには、Woven Cityに住みながら実証に参加するResidents(レジデンツ/住民)と、Woven Cityを訪れて実証に参加するVisitors(ビジター/訪問者)の2種類があります。*4
VisitorsはOne Day Weaversとも呼ばれ、さまざまなプロダクトやサービスに対して、新鮮な視点で評価することが期待されています。
ちなみに、「Weavers」(機を織る人)という呼び名には、トヨタグループの創業に遡る想いが込められています。*5
創業者である豊田佐吉は、母親が毎晩行っていた機織り仕事を楽にしたいという想いから、木製人力織機を発明しました。それが織布業界に革命を起こし、人々の暮らしの向上に寄与しました。
Woven Cityの提唱者である豊田章男会長は、これが「Weavers」の由来だと明かしています。*6
街の形をしたテストコース
トヨタグループはWoven Cityを、人が暮らす街の形をした「モビリティのテストコース」と位置づけています。*5
パーパスは「幸せの量産」、ビジョンは「モビリティの拡張」、ミッションは「テストコースの街で未来の当たり前を発明する」。
では、テストコースとしての機能にはどのようなものがあるのでしょうか。
三本の道
Woven Cityの地上の道は、3種類に分類されています。*7
「歩行者専用の道」「歩行者とパーソナルモビリティが共存する道」「モビリティ専用の道」です。

図2:三本の道
出所)Redefining What’s Possible, through Kakezan. カケザンで人の可能性が拡がる社会を|ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
https://www.woven-city.global/jpn/co-creation/地下の道
地上の道に加えて4本目の道が「地下の道」で、天候や気温などに左右されず実証がしやすい環境です。

図3:地下の道
出所)Redefining What’s Possible, through Kakezan. カケザンで人の可能性が拡がる社会を|ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
https://www.woven-city.global/jpn/co-creation/建物はすべて1周約400メートルの地下道につながっており、物流配送のロボットが地下からエレベーターで地上に上がり、居住空間まで小包などを届けられるように設計されています。*8
信号
信号には、モビリティと連動して信号の切り替えタイミングを制御するシステムを導入し、交通安全を目指しています。*7
e-Palette(トヨタが開発した電気自動車)は、走行中、常に位置情報と速度の情報を発信しています。*9
これをWbyTがクラウド上に開発した「青信号要求サーバー」が受信し、情報の中から信号機に近づくタイミングを計算して、青に切り替えるよう信号機にリクエストを送っています。
手前にあるセンサーに反応して切り替える、いわゆる車両感応式信号と違って、あらかじめリクエストを送信しているため、e-Paletteは信号機の手前で停車する必要がありません。
フェーズ1エリアでは、7か所にこのシステムを導入した信号機が設置されています。

図4:信号
出所)Redefining What’s Possible, through Kakezan. カケザンで人の可能性が拡がる社会を|ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
https://www.woven-city.global/jpn/co-creation/多機能ポール
多機能ポールは、街路灯と信号柱としての機能をはじめ、実証で使用するセンサーやカメラなどを柔軟に取り付けることができます。*7

図5:多機能ポール
出所)Redefining What’s Possible, through Kakezan. カケザンで人の可能性が拡がる社会を|ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
https://www.woven-city.global/jpn/co-creation/この多目的ポールは、4本の柱を束ねた細身の建ち姿で街の景観に溶け込んでいること、ポール内側に配したレール構造によりテスト機材の簡単な脱着が可能であること、さまざまな実証実験を支えるためポール前面に屋外用コンセント・USBポートを配置していることが評価され、2025年度のグッドデザイン賞を受賞しました。*10
目指すのは「カケザン」による発明
Woven Cityが目指すのは、「カケザン」による発明です。*7
トヨタのものづくりの知見や、それぞれのInventorsが持つさまざまな専門性を掛け合わせることで、1社や1人では創りだせない新しい価値を生み出すことを目指しています。
その実証テーマをみていきましょう。
トヨタグループによる実証のテーマ
まず、トヨタグループによる実証のテーマからみていきます。
- e-Paletteを活用したサービス提供のプラットフォーム機能の実証(トヨタ自動車株式会社)
さまざまなモビリティサービスに活用できるバッテリーEV e-Paletteを活用し、飲食やエンターテインメントを提供するプラットフォームとしての機能を実証します。
自動運転の実証も予定しています。 - モビリティの実証(トヨタ)
次のようなテーマでの実証が予定されています。
Personal Mobility Vehicle (PMV):自由に安心して楽しめる電動小型三輪モビリティによるシェアサービスの実証
Summon Share:自律走行ロボット(Guide Mobi)によるシェアカーの自動搬送サービスの実証 - モノの移動を簡単にして生活を変えるSmart Logisticsの実証(WbyT)
配送プラットフォームであるSmart Logisticsを活用し、建物内の自由なモノの移動を実証します。
モノを受け取る手間をなくし、その分をより豊かな暮らしづくりに使えるようにします。将来は、クリーニングや保管サービスなど、生活を支えるさまざまなサービスを実証します。 - 次世代遠隔コミュニケーション(WbyT)
情報のモビリティ技術を活用し、離れていても心の通った自然なコミュニケーションが実現することを目指しています。
提案するのは、スクリーンに向かって過ごす時間の質を向上させ、個々の成長や相互のつながりをより高められる未来の生活です。 - ヒトと共生する自律走行ロボットによるモノの移動価値の実証(トヨタ自動車東日本株式会社)
地域に寄り添う「人にやさしいロボット」を目指す自律走行ロボットcocomo(ココモ)の実証を行います。
cocomoは、衛星測位システムや障害物センサーを使用し、指定した目的地まで安全に自律走行をしたり、人に追従して走行することが可能です。*11

図6:自律走行ロボットcocomo(ココモ)
出所)Toyota Woven CityにてInventorとして実証実験開始 ~東富士工場のレガシーの中で、未来へ向けて挑戦~(2025年9月26日)|トヨタ自動車東日本株式会社
https://www.toyota-ej.co.jp/news/detail.php?id=mrjz-q_3_-xトヨタグループ以外のInventorsによる実証のテーマ
Woven Cityのオフィシャルローンチの時点で、計20のInventorsの参画が決まっています。*12
さらに、「カケザン」を加速するべく、参画が決まっているInventorsに加え、世界中のスタートアップや起業家、大学・研究機関など企業・個人を対象に、Woven Cityで試したい「カケザン」のアイデア応募も行われました。
下の表1は、トヨタグループ以外のInventorsによる実証テーマの一部です。

表1:トヨタグループ以外のInventorsによる実証テーマ
出所)モビリティのテストコースToyota Woven Cityで、本日実証を開始(2025年9月25日)|トヨタ自動車株式会社
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/43347821.htmlおわりに
Woven Cityは、建築や不動産を「完成形」として提供するのではなく、運用や実証を通じて価値を高め続ける新しい都市モデルです。
建物、インフラ、モビリティ、データが一体となって機能することで、街は柔軟に用途や役割を更新できる存在となります。
Woven Cityにおける「カケザン」の思想は、建物のソリューションに重要な示唆を提供しています。
このように、新たな都市モデルやスマートビル、インフラのあり方が革新され社会が進化していく中、現在、稼働中のビルや街にもそれらの最新技術が徐々に浸透していくでしょう。
利便性を高める新しい技術を柔軟に導入し、ビルの価値を最大限に高めることができれば、新たな収益につながる可能性もあります。そのため、投資対効果を見極めながら、導入に向けた準備を進めておくことが重要です。
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ニュースリリース:モビリティのテストコースToyota Woven Cityで、本日実証を開始(2025年9月25日)|ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
https://woven.toyota/jp/our-latest/20250925/
*2
Weaving the Future 未来を紡ぐ>What is Woven City? |ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
https://www.woven-city.global/jpn/
*3
Diverse Threads. One Fabric. One Woven City.>Woven Cityに集う人々|ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
https://www.woven-city.global/jpn/people/
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Weavers are the Heart of Woven City|ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
https://www.woven-city.global/jpn/people/weavers/
*5
Driving the Future of Movement 移動の未来を切り拓く|ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
https://www.woven-city.global/jpn/about/
*6
CES 2025 プレスカンファレンス 豊田章男プレゼンテーション -5年前に語った構想、モビリティのテストコース“Toyota Woven City”、実証開始へ-(2025年1月7日)|トヨタ自動車株式会社
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/41969727.html
*7
出所Redefining What’s Possible, through Kakezan. カケザンで人の可能性が拡がる社会を|ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
https://www.woven-city.global/jpn/co-creation/
*8
物流ロボット活躍を想定し建物群を地下道で結ぶ…トヨタが実証都市「ウーブン・シティ」第1期エリアを公開(2025年2月22日)|讀賣新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20250222-OYT1T50106/
*9
実証サポートしつつ実証? ウーブン・シティのエンジニアが語るシステム開発|トヨタイムズ
https://toyotatimes.jp/series/welcome_to_woven_city/005.html
*10
受賞ギャラリー>2025グッドデザイン賞 多機能ポール|日本産業デザイン振興会
https://www.g-mark.org/gallery/winners/29484
*11
Toyota Woven CityにてInventorとして実証実験開始 ~東富士工場のレガシーの中で、未来へ向けて挑戦~(2025年9月26日)|トヨタ自動車東日本株式会社
https://www.toyota-ej.co.jp/news/detail.php?id=mrjz-q_3_-x
*12
モビリティのテストコースToyota Woven Cityで、本日実証を開始(2025年9月25日)|トヨタ自動車株式会社
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/43347821.html


